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次の日、学部長の部屋を訪れた。
再婚の話を断る為に。だが、部屋に入り驚く、そこには理沙子がいた。
「・・・庸。」
「宮城くん昨日の話なんだが、・・」
入ったとたんに核心をつく話をされる。
戸惑っている場合ではないんだ、早くこちらから話をしなければ勝手に話は進んでいってしまう。
「そのお話ですが、やはりお断りさせていただきます。」
「やはり無理かね?宮城君に無理を言っているのは承知なんだが、親の私は娘がこの年で独り身なのも心苦しくてな。」
結婚はそんなに簡単な話ではない、それが再婚であれば尚更。
学部長はそれをわかった上で話している。だけど俺にはそんな気も起きない。
「庸、誰か他に好きな人でもいるの?」
早々にお断りして部屋を出て行きたかった俺の考えも虚しく、理沙子が言い出した。
「いや・・・」
俺は答えられなかった。
「だったらいいじゃない。」
理沙子の言う言葉の意味が分からなくて、そこに沈黙が広がる。
今日の夕飯を決めるかのように簡単に言ってのけた。だけど結婚は違う。
犬や猫を飼うのとはわけが違う、お互い人間で感情を言葉に出来る。
すれ違いからケンカになって一緒にいるのだって嫌になる時がくる。
一度俺たちはそれを感じたはずだ。だから何故、理沙子がそう言い出すのか分からなかった。
「理沙子、再婚は簡単なことじゃないんだ。」
「そんなの私だってわかってるわよ。」
少しの沈黙の後、理沙子は続けた。
「私は今だからわかるの、あなたの存在は私にとって大きかったわ。今更って思うかもしれないけど、あなたといた時は嬉しかった。また叶うのならあなたと一緒にいたい、そう思っているの。」
学部長もダメ押しかというように、言う。
「宮城くんもう一度考えてくれないか?まだ理沙子を嫌いなわけではないだろう?」
嫌いではない、だけどそこには愛情というものがないんだ。
こんな気持ちで相手に応えるのは失礼すぎる。
その前に俺には忍を選ぶ以外に答えはもっていない。
だけど虚しくも、再婚の話はどんどん進んでいく俺の両親まで出てきて乗り気な話をされてしまっては、俺の意見など聞いてもらえない。
おふくろは理沙子を気に入っていたし、結婚のときにもすごく喜んでいた。
親孝行らしいことをしたことがなかった俺は結婚した時、これで出来たのかなと安心した。
だけど離婚した時にはおふくろを悲しませてしまった。
忍に話せないまま、再婚の話は進んでいく。なんどか話そうとはした、だけど忍の存在が大きすぎて心の中から消せなくて、消したくなくて話せなかった。
第二部へ。