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梅雨の時期6月某日。
その日は、久々に青い空が晴れわたっていた。
毎日が平和。穏やかな日々。
こんな日々を送れる俺は幸せだと思う。
毎日仕事で疲れて帰っても待っていてくれる人がいる幸せ。
自分を待っていてくれる存在がいるだけで、心が満たされる。
俺、宮城庸35歳は文学を教えている大学教授。
講義や論文、人間関係、疲れる事は多い。
好きな文学だって、たまに自分の重りになることもある。
唯一重りにならず。それを取り除いてくれるものがある。
「あ~~、今日も疲れたなぁ。」
「お帰り。」
「おぉ、忍ただいま。」
まるで自分の家にいるかのように、居座るそいつ、高槻忍18歳。俺の働く大学の文学部学部長のご子息様。
1年前までオーストラリアに留学していて、急に帰国してきたかと思えば「あんたのこと好きなんだけど」と唐突に告白された。
最初は考えてることが訳わからなくて、俺には理解不能な人物だった。
だけど猪突猛進してくるコイツがいなくなって寂しさを感じている自分がいた。
もうこの時には後戻りは無理だったのかもしれない。
今まで迷惑の存在でしかなかった忍のことをずっとずっと、ストーカーかと思うくらい考えていた。
気づいたら、俺の中にアイツの存在は大きくなっていた。
それからいろいろなんやかんやあり、俺たちは恋人同士になったわけだが。
「宮城、何ぼけっとしてんだよ?」
「あ?いや別に・・・ごめんなほっておいて。」
ちゅっ
「ん・・・ぁあ・・ん、だめぇ・・・」
忍との最中の間にもコイツのことを考えてぼけっとしていた、俺はつくづく忍にはまってしまっていると思う。
だけど忍が可愛すぎて、俺だけ求めていて欲しくて、俺だけしか知って欲しくなくて、いつも無理をさせてしまう。
泣いて痛いのを我慢する忍を見て安心する自分もいる。
「ゃ、あん・・・はぁ・・・いっ・・・みや・・・ぁぁああ」
「しの、ぶっ・・くっ・・・」
「あ!ぁぁぁあああああっ!!!!」
達した忍は一瞬気を失った。
大丈夫かと心配し覗き込めば目を静かに開け俺に微笑み掛けた。
そんな忍が愛しくて額にキスをし、それから唇へと移る。
そっと、だけどしっかりと忍を抱きしめ眠りにつく。
忍は温かい、まるで赤ん坊を抱いているように体温が高く、安心を与えてくれる。
人が冷たいのは怖い。
俺にとって人の温かさは人が生きている証拠として絶対になっている。
忍を抱きしめいつもそれを感じている。
でも、それを感じることができればいいのは忍だけでいい。
忍さえいてくれれば、俺は充分だから。
「あ、結婚式やってる。」
「ジューンブライドかぁ。」
今日は、久々の休日で2人で出掛けた。
忍が遠出したいと言い出したから、俺たちの事を知る人がいない場所へと車を走らせた。
ふと思い立った所で車を停め2人で知らない町を歩く。
俺たちが普通の、男と女の恋人同士なら手でも繋いで歩いただろう。
だけど、どこに行ったって、俺たちが男同士というのには変わりない。
やはり人目を気にしてしまうのは俺の方で、忍は未だにそれに対して言い切れぬ思いを抱いていると思う。
だけど忍は何も言わない。
俺の気持ちを知っているから。
「6月なんてよくこんなジメジメした時期に結婚式なんてやるよなぁ」
「お前なぁ。夢のないこと言うなよ。6月の花嫁は幸福になるんだぞ。」
「だって、俺関係ねぇし・・・」
「!!・・・・・・」
今の忍の言葉に何も言葉が返せなかった。
忍は男であり花嫁にはなれない、そこで幸福というものから離れてしまう。
だけど忍がしっかりとした女性と結ばれ結婚すれば花嫁さんが幸福を手に入れることは出来ると思う。
だがしかし忍はそれを望まないだろう。
俺と同じで忍もその若さで一生を俺と生きると決めているのだから。
それが嬉しいと思う反面、罪悪感も感じる。
こんな若い奴の人生を狂わせていいのだろうか、俺にそんな権利はない。
それでも、俺を求めてくれる忍の気持ちには応えたい。
忍が俺を求めてくれる限り。
「大丈夫だよ、お前には俺がいる。」
「うん。・・・宮城、好きだよ。」
「あぁ、俺もだ。」
だけど、俺は大人で世間体に縛られる。
それを、振り切れないのは俺が弱いから。
自分の気持ちだけではどうにもならないんだと、感じる日々がすぐそこまで来ている。
次へ。